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電力小売り特別サイト

電力小売りのこれまでの経緯と今後

これからの電力メニューを選ぶ際の参考として、これまでの電力小売りの経緯と、これからの電力メニュー選びの要諦を整理しました。
少し長文ですが、皆様が今後の電力メニューを検討する際の方新策定に役に立つと思いますので、是非ご一読下さい。社内資料における電力資料作成にも役に立つかと存じます。

電力自由化

 2000年3月に大規模需要家(特別高圧)市場への電力販売が自由化し、2004年3月より高圧需要家(一般事業者用)市場の自由化が、2016年に家庭用も含め全面自由化がなされました。
 電力自由化に合わせ、旧電力会社とは別に「電力小売り事業者(=新電力会社)」が登録制で電力販売できることとなり、簡単な登録制度により多数の販売事業者が事業参画しました。2023年9月時点でも、約730社が登録されています。
 本来電力販売を行うには、十分な自己電源(電力事業者から相対取引で長期に電源を確保も含め)を持つことが常識ですが、自由化による競争を推進するために余り電源を持たない事業者も登録されました。
 電力を販売するには電源がないと販売できませんので、電力を仕入れできるようにするため、国は「電力卸市場(=JEPX)」を立ち上げ、本市場より仕入れを行うことで新電力会社が小売りできようにしました。
 JEPXの電力は、発電事業者が市場に参画して売り出ししないと成り立ちませんが、我が国の発電所はほぼ旧電力会社のもので、旧電力会社は自己の販売会社もあるため市場参加のメリットは余りありません。国の要請により、市場の需要量を満たすために旧電力会社は自主的に販売量の約20~30%を限界費用で市場に提供しています。また再エネ事業者の多くは「固定買い取り制度」により市場参加でなく、電力会社に買い取ってもらうことで間接的に市場提供することになっています。
 この仕組みで、電源を持たない小売事業者でも市場販売が出来るようにしています。

電力小売り

 旧電力会社は、以前からの電力供給メニューである基本料金及び従量料金の固定単価制で電力提供を行い、お客様が比較しやすいように新電力会社もこれに合わせ固定単価制での商品提供による価格競争を始めました。一部、電力価格の市場変動リスクを回避する新電力会社は「市場連動価格」(変動単価制)のサービスを展開しました。これは、当初の卸市場価格が安かったので、固定料金制よりお安くできることでお客様にメリットがありました。
 将来的に電力システム改革により自由化市場が完成すれば、電力価格は、固定価格制より市場連動性の方が安くなることが予見されています。なぜなら、固定制度は発電所の開発費や燃料などの運転費用の変動があるため、定額にするにはリスク分を料金に加算せざる得ないからです。市場価格より余程安価な運転費の発電施設でなければ市場連価格より高くせざるをえません。
 将来の電力構成は、ベース電源を再エネとして、これを電力システムネットワークで需給調整して出来るだけ変動を削減し、削減しきれない多くの部分は火力発電等で調整し需給が釣り合うようにすることになります。(調整が出来ないと停電につながります)ベース電源として燃料等を必要としない再エネ電力が卸市場に多く流れると、燃料等の要する電源の多い固定単価制商品よりも市場連動型商品の価格優位性が増すと言われています。

一昨年の電力高騰

 温暖化対策が世界的な潮流となり、欧州ではいち早く石炭火力発電所の廃止や火力発電燃料の天然ガス化への転換、再エネ発電所開発が進められました。天然ガス(LNG)需要が増える中、2020年の秋口から世界の複数の大型LNG製造所のトラブルによる稼働停止が続発したためLNG価格が高騰し、一方で天候不良による再エネ発電量の減少が重なって電力需給ひっ迫による電力価格の高騰が始まりました。
 この時期のわが国では、CO2削減のため石炭火力の停止やLNG火力へのシフトが進められており、電力価格はLNG価格高騰の影響を受けました。またわが国ではFIT制度により太陽光発電が普及しておりますが、運悪くこの時期の天候不良が続いて発電量が大きく減り、補完する電源として原子力や石炭火力も停止(廃止)状態で、再稼働するにも最短でも2~3カ月かかることから、需給がひっ迫し電力の取り合いから異常な価格高騰がおきました。この間、需要家に対し電力利用削減協力が初めて発動されています。
 その後、天候不良の回復から需給は徐々に落ちきましたが、LNG価格は高止まりし、ロシアのウクライナ侵略により、欧州へ多くのLNG供給していたロシアLNGの購入を制限し始めたことからLNG高騰が長く続くことになりました。欧州では、ロシアからのLNGを他国からの調達に切り替えることや、一時削減を目指した原子力発電回帰の動きなどで徐々に対策を打っています。
 この中で、JEPX市場でも旧電力供給分に関しては発電コストの上昇による影響を受け取引価格が高止まりしていましたが、徐々におちつきを取り戻し2022年末からは、平均的な取引価格に戻っております。

新電力への影響

 2020年末の異常高騰により、新電力会社は大きな影響を受けました。
 前述した通り、新電力会社も固定単価での販売を行う中、この異常な高騰により仕入れ価格が上がり、お客様への価格転嫁が中々出来ず、電力供給は止められないため販売価格が逆ザヤになり、財務体力の脆弱な会社は倒産し、財務体力を有する会社でも逆ザヤのリスクから事業撤退が続出しました。JEPX規約では仕入れ電力の決済が2日後精算となっており、一方お客様に小売した料金回収は最短でも2カ月かかるため、異常高騰による資金繰りの悪化もこれらの会社に大きく影響しました。
 このことで新電力会社の信用が落ち、旧電力回帰の動きが起きました。とはいえ旧電力各社も原価高騰は同じで、やむなく既存契約者の値上げを段階実施し、了解を得られない方には最終保障約款メニュー(送配電会社が異常時に電力供給を引受ける制度)切替えを進めました。また、旧電力管轄内では経営効率の悪い発電所の閉鎖や温暖化対応から石炭火力の閉鎖を進めており、余剰な電力は限られていたことから、新電力からの変更需要を受けきれず新規受注を停止しました。このことで引受先のなくなった需要家は、結果、送配電会社の最終保障約款に切替を行いましたが、異常時対応の制度にて供給電力には限界があることと、提供価格は電気事業法で標準メニューの1.2倍までという価格上限の決まりがあったため送配電会社も逆ザヤになり、早急に旧電力会社系列の小売電力会社へ新規引き受けが開始できるよう国より要請がなされました。
 このことで、旧電力系小売電力会社では新規メニューの設定などを急ぎ、2023年4月1日より「新約款メニュー」による適用を開始、徐々に引き受けを再開しています。しかしながら、今だ多くの会社で最終保障約款のまま電力供給を受けているのが現状です。

政府の対応

 政府では、これら電力高騰に対処するため、期間限定の一部料金負担を開始し、燃料調整費値上げ上限の撤廃や最終保障約款料金の上限撤廃などの対策を行っています。

新たな電力料金

 旧電力系の小売会社は価格高騰の経緯を踏まえ、新約款メニューにより燃料調整費と合わせ市場価格による市場連動調整費を加え、ほぼ市場連動型商品となりました。
 新電力では、固定単価型メニュー、ベース電源を地元電力メニューで/変動部分を自社メニューで提供する部分供給メニュー(これは提供電源が足りないための方策ですが)、市場連動単価メニューがあります。(市場連動単価メニューは旧電力系にも用意されている。)
 経営体力のない新電力会社の多くは事業継続が難しく、登録は残しながらもほぼ市場から退場したと思われ、残った体力のある会社も概ね上記のようなリスク回避のできるメニューの展開となっています。

今後の電力メニューの選択

 では今後、皆様はどのメニューを選ぶのが良いでしょうか?
 上記では部分供給も含めおおきく3つのメニューを示しましたが、大きな違いは新約款メニュー型と完全市場連動型メニューの2つです。
 新約款メニューでは、一部市場連動部分が採用されております。これは、固定メニュー単価を設定するためには、発電費用を含め電力仕入れ費用を考慮し、将来の費用予測に基づき単価を設定しますが、これまでの変動リスクを織り込んだ基本単価設定だけでなく、予測値を超えた、あるいは下がった部分を市場調整としてこれまでの燃料調整費と合わせ単価より±するものが導入されました。また、これらメニューでの基本料金には、主に固定費及び送配電費用が含まれます。基本料金や使用量に応じて支払う従量料金単価には会社利益も含まれます。
 完全市場連動型メニューは、JEPX市場より電力を購入し一定の会社手数料を載せて提供される商品で、基本料金の考え方は新約款メニューと同様です。従量単価はJEPX市場のエリア毎の約定価格で決まります。
 2つのメニューの大きな違いは、価格を一定化するために将来の変動リスクを織り込んだ価格設定をする新約款メニュー型とあくまでも単純に市場価格に連動させる市場連動型の違いがあります。
 ここで各メニューの算定基準となる発電所の構成ですが、新約款メニューの方では供給電源の主力となる自社電源構成が問題になります。圧倒的に安い電源は大型水力や原子力ですが、これらの殆どは旧電力会社のものとなります。旧電力では、将来のベース電源として海上風力や大型再エネプラントを開発しています。また再エネの不安定電源を調整するためLNG火力を持つことになります。(LNG火力は、将来的にCO2フリーの燃料に代わっていきます。)また、不足時に備え、長期相対取引で企業電源の確保や最終的に過不足になる部分は調整市場等で調整することになります。
 市場連動型では、現行ほぼ電力会社拠出分とFIT電源で構成されています。
 FIT電源は、固定買い取り期間が満了すれば、独自に売り先を探さねばなりませんが、自己利用や高く売れるユーザーに相対で売るほかは、電力小売り会社の買取り価格で販売するかJEPXで販売するしかありません。相対取引は需要者との直接取引(プラットフォーム会社を経由)で仲介マージンが少なく売れます。では電力小売り会社に売るのとJEPXで売るのはどちらが良いかですが、発電者は高い方へ売るので、小売会社が相対取引で仕入れようとすればJEPXより高い価格提示が必要です。結果、小売部門を持たない再エネ発電者の電力はJEPXの方が安くなります。JEPXのその他の電源は発電事業者の電源が限界費用で提供されることから余り価格差はでないと考えられます。
 すると、最後は火力・原子力・水力等の電源と、これからも開発が進む再エネの価格差が問題となります。
 再エネ電源(A)は、将来のベース電源と位置付けられています。火力以外の既存電源(B)は再エネベース電源不足分を補完するこれまでのベース電源で再エネが増えれば減っていく電源です。火力(C)は再エネの需給を合わせるための調整電源として再エネ普及において必須の電源です。
 (B)電源は、大型投資施設で償却も維持・撤去も費用の掛かる施設です。主力ベース電源として長く使うことで安価な電力供給が可能ですが、需要が減少していく前提では高い電源になっていきます。(C)電源は、再エネ規模に応じた電源調整をする必要電源ですが、CO2削減のためLNGやエコ燃料など高い燃料を使わざるを得ません。
 従い、今後しばらくは普及が拡大している費用対価の良い太陽光電力が主力となるJEPXの単価が安くなると考えられ、市場連動商品が価格的に優位になると想定されます。
 ただ、この場合皆様が市場連動で心配される異常高騰の問題があります。
 この点、市場連動型商品では以下のようなことが言えます。
 卸市場における燃料高騰については燃料を要する電源比率が低いことと、需給逼迫については異常気象による再エネ発電所の発電量不足時がありますが、昨今の異常高騰を踏まえ異常時の電力逼迫を避けるための方策(容量市場/長期脱炭素電源オークション/全国送配電網整備による電力融通量の拡大等)が次々に打たれており、一昨年のような事象発生は発生しづらくなっていきます。
 更に新約款メニューでも市場連動制が採用されており、依然と比べ市場連動型に近い商品になっていますので、固定単価型メニューと以前のような差がなくなっています。
 以上のことから、皆様が電力メニューを選ぶのには、大きく2つの選択になります。
 ① 計画予算などから、なるべく価格変動のない商品を選ぶ → 約款メニュー型(固定単価商品群)
 ② 相対費用として電力料金を抑えたい → 市場連動型商品群
※①は、これまでに比し、燃料調整費の直反映や市場調整単価設定により市場連動型に近い商品となっており、これまでの様な変動の少ない商品は少なくなっています。

※市場連動型商品を選ぶ場合は、旧電力系/新電力系/新しい提供者として電力プラットフォーマー系がございます。
 価格差は、概ね手数料の違いになりますが、現行ビジネススキームの違いからプラットフォーマー系がお安い傾向になっています。

電気料金構成

◆旧メニュー(主に2023年3月以前)

・旧電力会社約款料金(固定料金単価制)

 基本料金:契約電力量×基本料金単価
 従量料金:使用量×従量料金単価
 その他 :燃料調整費/再エネ賦課金

・自由化後契約料金(期間設定型固定料金単価制)

 基本料金:契約電力量×基本料金単価
 従量料金:使用量×従量料金単価(長期間設定あり)
 その他 :燃料調整費/再エネ賦課金

・市場連動型料金(市場単価連動による変動料金単価制)

 基本料金:契約電力量×基本料金単価
 従量料金:(市場単価+送電単価)×使用量
 その他 :再エネ賦課金

◆新メニュー(2023年4月以降)

・新約款料金(固定料金単価+調整費等単価)

 基本料金:契約電力量×基本料金単価
 従量料金:(使用量×従量料金単価)+(使用量×調整費等単価)+再エネ賦課金
  ※調整費等単価:燃料及び電力市場価格による変動部分を反映した±単価

・2階建料金(ベース使用量/その他使用量部分供給)

 基本料金:(ベース)契約電力量×基本料金単価/(その他)契約電力量×基本料金単価
 従量料金:(ベース)使用量×従量料金単価/(その他)使用量×従量料金単価
  ※旧地元電力会社からベース電力を新電力会社がその他電力を供給
 その他 :燃料調整費/再エネ賦課金

・市場連動型料金(市場単価連動による変動料金単価制)

 基本料金:契約電力量×基本料金単価
 従量料金:(市場連動単価+送電単価)×使用量
 その他 :再エネ賦課金

◆東京電力参考メニュー(2024年4月以降)

・市場調整ゼロプラン

 基本料金:契約電力量×基本料金単価(3メニュー最高値)
 従量料金:使用量×従量料金単価
 その他 :燃料調整費/再エネ賦課金

・ベーシックプラン(市場連動部分30%)

 基本料金:契約電力量×基本料金単価(連動30%を加味した単価)
 従量料金:(使用量×独自単価)+(使用量×調整費等単価)+再エネ賦課金
  ※独自単価:市場連動30%リスクを加味した独自単価
  ※調整費等:燃料及び電力市場価格による変動部分を反映した±単価

・市場価格連動プラン(100%市場単価連動)

 基本料金:契約電力量×基本料金単価(連動リスクを加味した単価)
 従量料金:((送電単価+市場予測単価)×使用量)±(使用量×市場調施単価)
 その他 :再エネ賦課金
  ※市場予測単価:過去データにより設定する単価
  ※市場調整単価:実際の市場価格と予測単価の差額を清算する単価

備考

〇 各メニューの「基本料金」には「託送料金基本料」が含めれています。
〇 各社により「基本料金」「従量料金」に手数料が加味されています。
(一部会社では、手数料を別掲するものもあります。)
〇 2024年4月より「容量拠出金」が付加されます。

 当社では、旧電力会社/新電力各社の市場連動商品を含めた各種商品をラインナップし、電力見積もり比較を承っております。
 今後は、電力小売り各社のメニューが複雑化することと、今後「容量拠出金」などの新たな費用発生もあり単純な比較は難しくなって来ます。
 当社では、過去1年分の電力明細と30分間利用データを頂ければワンストップで各社の様々なメニューのお見積りを作成し簡単に比較可能にしてご提示致します。
 また、様々な制度変更等もあり、その時点における最適なメニューを適宜提案しております。

 御社に最適な電力メニューの見直し検討は、ぜひ当社へご依頼ください。
 また、新たな電力契約見直しにお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

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